2022.05.22

パルプマガジンみたいに薄っぺらいコラム

親愛なる友だちへ、ひねもです。

先日、柴又に行ってきた。

1日乗り放題の下町日和切符を使って。


柴又駅。わかる人はわかるマンホールのBLUES宣言裏ジャケの真似。駅が改装されてるから雰囲気変わってしまっているが。。


まずはお昼ご飯。

“男はつらいよ”の記念すべき1作目でさくらが結婚披露宴をした”川甚”は閉店してしまったし、帝釈天参道にあるお店は観光地価格だろうしなぁ、、、と思って駅反対側の古き良きな佇まいの蕎麦屋で昼食。

たぬき蕎麦を食べた。濃くて美味かった。青菜が茹で加減が抜群で特に良かった。
で、蕎麦を啜ってると常連風のおっさんが来店して”生姜焼き定食出来る??”と聞いた。

品書きに肉蕎麦があるのでその豚肉を使った裏メニューがあるんだなあと思ってたら御高齢の店主が”出来ないなあ”と。

そしたらおっさんは”とんかつ定食は出来るよね?“と聞いた。

カツ丼があるのでそれは出来るだろうと思ってたら店主はこちらも“出来ない“とニベもない答え。

着席するなりスッとメニューに無いものを注文したから常連か馴染みの客だと思ってたがそうではないらしい。




謎のやりとりだった。。

おっさんは結局カレーライスを頼んでた。。



定食を食べたいなら他のお店に行けば良いだけの話し。

老舗蕎麦屋にきてわざわざ蕎麦以外の無茶なオーダー繰り返すも通らずでカレーライスって。。

たまにいる常連扱いしてほしい&通ぶってるタイプの人なのか?

そういう感覚はよくわからない。。
帝釈天参道入口には渥美清さんの常夜燈が。


この近くの駄菓子屋でなんとピンボールマシーンを発見。
今はピンボールって絶滅の危機に瀕していてなかなか無いのだ。

僕はジョージ・ルーカス監督の“アメリカングラフィティ”という映画が好きなんだけど、その映画の中でファラオ団というグループが溜まり場にしてるのがピンボールマシーンがたくさんある場所で。
映画を見るたびにやりたいなーと思うのだけど今時の最新のゲームセンターには全然置いてないのだ。


ピンボールの全盛期って1930-1970年くらいらしいので、そりゃ半世紀以上前の筐体なんて無くて当たり前なのだけど。。

アメリカングラフィティは1962年の設定だからたくさんあるけど、2022年の東京ではまず見かけない。
これとかめちゃくちゃ可愛い。欲しい。

一時期やりたすぎてiPhoneにピンボールのアプリを入れてた事もある。



で今回久しぶりに本物で遊んだけど”そうそうこんなんだったなー”くらいで別に熱中はしなかった。残念だけど。


もしピンボールリバイバルとかあってもたぶん通わないだろう。

たまに発作的にやりたくなるだけ。

というかアメリカングラフィティ見たとき限定なのかも。


本体がずんぐりとデカいとこや映像に頼らない立体的なオブジェクトの数々やド派手な照明とかが”永遠に失われた古き良きアメリカ”って感じがして愛おしいのかもしれない。



全然関係ないけどアメリカングラフィティで一番オシャレなのはテリーだと思ってます。異論は認めます。



んで話しは本題に戻って帝釈天参道で初期寅さんで使われた”とらや”でお団子を頂く。

もちろん名物は餡子たっぷりの草団子なのだが、甘い物はあまり得意ではないので醤油で焼いて刻み海苔をまぶしたのを食べた。

とても美味しかったし名物の団子&コーヒーと温かいお茶までもらってお会計570円とお安くて、最初どうせ観光地価格だろうなぁとか思っててすみませんでした。

スタバより安いね。


作品に馴染み深いのは”高木屋”の方だけど、高木屋さんはたまにデパートや駅ナカの催事場とかで売ってたりして買った事あったので今回はとらやに立ち寄りました。




寅さんがヒットしたから店名を”柴又屋”から劇中に登場する”とらや”に改名するあたり金儲けの臭いがするがどうなんだろう。



この店が”とらや”に改名したから映画側は店名を”くるまや”に変えるんだよね。

”とらやの寅さん”ってめちゃくちゃ語呂が良かったのにね。残念。




熱心なファンでない限り帝釈天参道で”とらや”を見たら“ここがあのとらやさん!”となってしまうのは仕方ないし、初期だけだけど実際に撮影に使われてるから聖地のひとつには間違いないし。



ただ他の店、特に高木屋さんとかは面白くないだろうなあとは思ってしまう。


実際に訪れた”とらや”は店員さんはテキパキしてるし値段も安いし美味しいし初期の階段も見れて僕は満足した。


僕の前でお会計していた子ども2人連れたお母さんが財布を出すのに手間取っていたら、店員さんがその幼い子ども2人と手遊びしてあげて焦らないように間を持たせてて。

下町人情と言っていいのかわからないけど最近あまり見かけないような優しい場面もあったりして。


観光地にありがちな単に営利目的だけの嫌な店って感じは全然しなかった。



そもそもガチ寅さんファンは団子を食べないだろうしね笑

映画の中では寅さんは団子なんてつまらないものだとか罵倒してるから。

それは江戸っ子の愛情の裏返しなんだけど。

人情映画ではあるけど実家の団子屋の団子を食ってしみじみ美味いなあとかってシーンは寅さんにはないから笑


で、寅さん記念館へ。

下町日和切符のおかげで割引入場できた。ラッキー。


映画全作品で使われたあのお茶の間が目の前に!

興奮したね。

そしてとても狭くてビックリした。

こういう映画のセットって実際の普通の建物より広く作ってあるパターンがほとんどではないだろうか?


テーブルも僕の家の食卓とさほど変わらないサイズでビックリ。

ここでおいちゃんおばちゃん、博とさくらと満男に寅さんでたくさん食器並べて食事してたんだから本当に昭和の家庭そのままだ。

だからあの空気感が生まれたのだなあと。
オカズは大皿から各々で取るスタイル。

ちなみに寅さんの好物は”里芋の煮っ転がし”と”がんもどきの煮たの”とシブい。

嫌いな食べ物は鰻、天ぷら、ナルト、らっきょうだとか。

言われてみればラーメン食べながらナルトを箸で弾くシーンがあった気がする。
何十回も見たあの階段。
ラストは歴代のマドンナに見送られて。
皆さんは誰が一番好きですか?

寅さんとの相性で見るのか、演技で見るのか、自分がタイプなのか。

どう選ぶのか難しいとこです。


寅さんとのベストマッチはやっぱりリリー(浅丘ルリ子)だなあと思う。


演技って面と切なさは花子ちゃん(榊原るみ)だなあ。

YouTube→ https://youtu.be/3HQU7EZFbZs


個人的な好みで言うと幼馴染の”お千代坊”こと千代さん(八千草薫)と早苗ちゃん(大原麗子)かなあ。

亀戸天神での別れが切ない。


そして大原麗子さんの可憐さがたまらない。

声が良い。

“声にマニキュアを塗ったような”と言ったら女性から怒られてしまうかもしれないが、艶のある声でたまらない。

YouTube→ https://youtu.be/jlwKbxmekY0

見終わったあと大原麗子さんの動画探しちゃったもんなあ。

YouTube→ https://youtu.be/ihGyD8PzTHc


こうした大物女優の方たちの全盛期を僕は寅さんを見るまであまりよく知らなかった。

吉永小百合さんとかキャンディーズの蘭ちゃんとか。

失礼ですが一昔前の人気者ってイメージしかなくて。

寅さんで初めてしっかり動いてるとこ見てそりゃ大人気なワケだ!って再確認するというか。


寅さんのトランクの中身。

究極のミニマリスト。

このカバンひとつでどこへでも。

今だったら時刻表なんて要らないからもっと身軽だね。

まぁ寅さんがスマートフォン使ってる姿は想像つかないけど。

作中で時代が進んでも頑なに連絡は公衆電話orハガキだったし。



そう、寅さんは時代が進むんだよね。

ストーリー構成は同じなんだけど時代は進む。

そこはドラえもんとかサザエさんとか、クレヨンしんちゃんとかそういう作品とは違うところ。 

こち亀とも違って寅さんはしっかり歳をとっていく。



ここが大事なところ。

だからこそ全てのシーンが際立つというか。




人情映画だから観ているとついつい”昭和はよかったなあ”みたいな印象を抱いてしまうけど、山田洋次監督はそういった失われゆく時代を切り取る、もしくは残そうと意図的にそっちにもっていってるわけで。

そこは勘違いしてはいけないところ。




時事ネタや時代背景が入って、あとは大きな魅力なのは最高の”ロードムービー”であるところね。


寅さんは”テキ屋”という商売だから日本中を旅して回るわけなんだけどその時代の各地の景色や祭りがたくさん映っていて。

建物や食べ物、ファッションとかね。

未来の人たちにとって過去の人々の暮らしを知る第一級の最高の資料になることは間違いない。

そういう意味でも貴重な作品だ。




音楽でいうところのラモーンズと同じで寅さんとは”偉大なる反復”であると思う。

ラモーンズもシンプルでどこ切っても金太郎飴みたいにずっと同じって思っちゃうけど作品毎にけっこう違うからね。


なんでも長く続いてるものはそうだと思うけど。

老舗の飲食店とかも”変わらない”を売りにしてる風で時代に合わせて色々と変化させてるらしいし。

ベビースターラーメンとかも時代のニーズに合わせてずっと味変えてるらしい。

不変なイメージをこちらが勝手に抱いてるだけで。


なんでもアップデートは必要不可欠。

柔軟に変化していくけど核はしっかりある。

確立していくことと不変はちょっと意味が違う。




僕は短い期間に集中して一作目から順番にたくさん“男はつらいよ”を観たのだけど、ある時期からなんといっていいか神様みたいになっていくんだよね。

神様と呼ぶんじゃしっくりこないんだけど最初からカリスマだからカリスマ化でもないし。

誰しもが共感できるかわからないけど面白い漫画や小説とかでストーリーが進んでキャラクターが作者の手を離れて勝手に動き出してるように感じる事ってあると思うんだけど、そういう感じで。



”寅さん”って確立されたキャラクターはもちろん最初からあるんだけどどんどん圧倒的になっていって、剣聖とか棋聖とかって言葉の感覚で”聖人”というか。

間違っても崇拝の対象って感じではないからニュアンス違うんだけど。

“ゾーン”に入ってるとでも言えばいいのか。




そこからはもうひたすらすごい瞬間が何作品も続く。

ただ寅さんは作品毎に歳をとるから老いていく。



寅さんを演じた渥美清さんの体調が悪くなって撮影が難しくなっていくんだけど、そうすると周りがリカバリーに回って他の要素ができてまた違う魅力が産まれて。

これは1人の俳優が主演を務めて長く続いた作品ならではの素晴らしさ。

007だったらジェームスボンドは何人もいるからね笑




寅さんの生い立ちは複雑で妹のさくらは腹違いで、兄もいたけど亡くなっていて。

面倒みてくれてるおいちゃんとおばちゃんは子どもがいたけど戦争で亡くしていて。

寅さんが家出してフーテンになってしまうのも父親が原因。だけど父親が辛くあたってしまったのは根っこでは戦争が関係していて。

さくらの産みの親で寅さんの育ての親である後妻も若くして病死。


お茶の間での食事シーンもそう思って見ると寅さんはおいちゃんおばちゃんの子どもではなく、妹も腹違いで、、、と血の繋がりは薄い。それでも団欒があって温かくて。

”家”とか”家族”ってなんだろうと考えさせられてしまう。

“アウトをアウトとしない”って不寛容社会へのメッセージが響く。


寅さんの明るさや面白さ、そして切なさは僕の好きなブルースの”ユウウツはその辺を飛び回ってるんだぜ”って考え方に似ている。

抱え込んでうなだれるのではなく、抱えて笑って水平線まで飛んでいく。


最高の大衆娯楽映画だ。



まだまだ書きたいけどさすがに長すぎるのでこの辺りで終わります。

オススメだから是非見ろ!というよりはそれぞれが自分の人生を歩む過程でふとしたタイミングで出会って魅力に気付いてもらえたら嬉しいなってそんな映画だと思います。





柴又散歩の話から自然と寅さんへの熱い思いが溢れてしまい映画紹介になってすいません。

ここまで読んでくれてありがとう。





ブラザー&シスター、最後に39作目の柴又駅での寅さんと甥の満男との大好きなセリフを添えて。

YouTube→ 
https://youtu.be/uV-gAMV6J-Y
P.S この文章は何日かに分けて書いているのですが、ある日に寅さんファンでもあった上島竜兵さんの突然の訃報が。僕はそれもまた天寿、寿命であるとの考えをもっていますが素直に驚いたし悲しかった。在りし日の姿を偲びつつご冥福をお祈りいたします。

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